開催趣旨

  近年の目まぐるしい技術革新の波は、製薬産業にも押し寄せてきており、AI、シミュレーション、ビッグデータなどを活用した情報技術(IT)と、iPS細胞やバイオバンクによるヒトサンプル活用手法の開発の進展に伴い、新薬開発のプロセスに一大変革がもたらされつつあります。 そのような流れの中で、昨年度の年会でも、一昨年 「in silico創薬の将来-生体分子シミュレーション、構造生物学、ビッグデータの連携からアカデミア創薬へ」、昨年 「データ駆動型研究が拓く創薬」というテーマのもと、in silico創薬について、主に産業応用からの視点で取り上げられてきました。
  一方で、医薬品の薬効・安全性評価についても、新しい潮流ができつつあります。今までは、新しい治療薬を待ち望む患者のために、一日も早く有効で安全な新薬を届けることが重要視されてきました。しかしながら、ガイドライン等が整備され、新薬承認のための厳しい審査を通過した医薬品でも、適正な使用を怠ったことによる有害作用や、開発段階では予見できなかった副作用が発現する事例が未だに散見されています。このような事例を踏まえ、市販後も調査と評価を継続的に行い、有効で安全な医薬品に育てていく取り組みが始まっています。新しい医薬品を作り出す一連の過程を“創薬”と言うのに対し、市場に出た医薬品を有効性と安全性並びに使いやすさがより高いものに育てていくことを“育薬”と言います。
  本大会では、産業界が進めるin silicoやAIなどを用いた“創薬”の流れと、インフォマティクスや医療ビッグデータを取り込んだ市販後調査などの“育薬”の展開により、いかに患者に有効で安全な医薬品を届けるかという基本的な課題を、”レギュラトリサイエンス”をキーワードに議論したいと思います。
  とかく先行する成功事例が広く世に広まるため、in silico創薬の華々しい面に目が向きがちですが、その成果を着実に社会還元するために必要な社会的な基盤整備について、ITなどのドライな研究だけでなく、iPS細胞やバイオバンクなどを用いたウェットな研究も含め、様々な分野の第一線で活躍される研究者や専門家から意見を頂き討論することで、問題点を浮き彫りにし将来的な解決方策を探っていく場を提供できればと願っております。
  創薬の現場に身を置く方だけではなく、基礎研究をされている方にも、これからの創薬研究の方向性を考えるうえで是非とも積極的に参加いただくことをお願いいたします。

CBI学会2018年大会 大会長 西島 正弘(国立医薬品食品衛生研究所名誉所長)
  実行委員長 石田 誠一(国立医薬品食品衛生研究所)