CBIの関心領域
更新2011.1.28
CBI学会は、医薬品のような有用な物質を分子のレベルからデザインすることと、そうした物質の生体への作用を分子のレベルからしらべるという問題に、情報学、コンピュータ、あるいはITなどを応用する学際的な研究交流の場をつくることをめざしている。そのために、CBI学会は、こうした研究を支援する情報計算の基盤環境をつくること、学会が先導して新しい挑戦的な課題に挑むことも活動目標に含めている。CBIの関心領域は、伝統的な物理学、化学、生物学、薬学、毒性学、医学と情報学、計算科学だけでなく、ゲノム、バイオインフォマティクス、人工知能、ネットワーク、IT、ナノテクノロジー、環境科学など幅広い分野に広がっている。CBIの年次大会の研究発表や学術誌(CBI Journal)への論文投稿では、便宜的に以下の7つの分野に整理している。これらについての詳しい内容はそれぞれの項目で解説されているが、これらの分野は科学技術のフロンティアにあり、きわめて発展的、流動的である。したがって上記の区分も定期的に見直すべきであると考えている。現在、食品、補完代替医療、根拠に基づく予防医学(Food, CAM, Evidence Based Preventive Medicine)と有用天然物の探索(Biochemical Prospecting)の2つの課題を調査している。
分子構造決定など化学における計算技法だけでなく、ナノテクノロジー、分子生物学、医薬品の開発、毒性研究、疾病のメカニズムと制御、農薬の開発、環境化学、環境生物学など化学の応用に関係した巾広い分野の計算技法やその応用研究、さらにソフトウエア・パケージやデータベースなど情報計算資源を対象とする。
例えば、
例えば、
- (1)量子化学、分子力学、分子動力学、分子軌道法などの基礎理論とその化学反応などへの応用
- (2)分子構造決定に関わる計算手法と構造データベース
- (3)新しい分子のデザインや原子分子の制御に関わる計算技法
- (4)分子構造や化学反応のイメージング
- (5)タンパク質のフォールディングを含む生体分子の大規模計算
- (6)薬剤や環境汚染物質などの標的となる生体分子のモデリング
分子生物学の進歩によっていまや生命や疾病現象が生体内の分子の相互作用として理解されようとしている。また医薬品研究、農薬研究、さらには環境汚染問題も、科学としてみれば、すべて生体外からの化合物と生体系の分子との相互作用に帰着する。この分野はこうした分子相互作用への理論と計算によるアプローチと計算パケージやデータベースを対象とする。
例えば、
例えば、
- (1)医薬品や化合物の毒性に関係した構造活性相関(QSAR)
- (2)生命の素過程である生体内の分子間相互作用のモデリング
- (3)受容体とリガンドとの相互作用モデル
- (4)計算による結合性の予測(Docking Study)
- (5)薬らしさ(Drugability)解析
- (6)HTS (High Throughput Screening)のためのライブラリィ・デザイン
- (7)計算によるスクリーニング(Virtual Screening)
この分野は、Structural Biology, Computational Biology, Bioinformaticsなどと呼ばれる研究分野であり、大量に生産される生体分子関連の実験データの整理、編集、蓄積、解析、解釈への情報技術の応用や理論的な解析や予測法の研究が中心である。すなわちゲノム解析、遺伝子配列領域の予測、ホモロジー解析、タンパク質の構造と機能解析、およびそれらに関連したGenomic Computing, データマイニング、3D計算生物学、疾病の遺伝子の探索、環境因子応答の遺伝的なバリエーションの解析と応用、医薬品開発や毒性学への応用に関連した情報技術(IT)や計算技法(Computational Methods)などを対象とする。ただし、現在急激に増えてきたゲノム・ワイドな計測に関係した研究は次の分野として独立させている。
DNAチップ、マイクロアレイ、プロテオミックス、メタボロミックスなどゲノムワイドな同時計測実験で生成される大量データの解析(Data Mining)と解釈、そのためのコンピュータシステム。純粋に実験的な研究は対象外とする。また医薬品開発をめざしたPharmacogenomicsだけでなく、毒性研究や環境汚染物質問題に関係した、Toxicogenomics、Environmental Genomicsなども対象とする。
医薬品の開発や医薬品の適正使用、患者の個人差を考慮したPersonalized Medicine、毒性研究などを支援する情報計算基盤としてのデータベースやコンピュータシステム。
例えば、
例えば、
- (1)医薬品の構造データベース
- (2)計算毒性学の基礎となる化合物データベース
- (3)生体作用のある化合物データベース
- (4)医薬品や毒性化合物のADMEデータベース
- (5)標的となる生体分子のデータベース
- (6)ゲートポイント(Gate Points)における分子間相互作用の解析
- (7)ゲートポイントからエンドポイントに到る因果連鎖の知識ベース
- (8)臨床情報を医薬品開発にフィードバックするための情報システム
- (9)データベースや要素システムの統合技術
疾病のメカニズムはこれまで、生化学、生理学、動物実験などによって組み立てられてきたが、いまや分子生物学の知見に基づいた分子の言葉で記述されるようにもなってきた。この分野は、ゲノムやゲノムワイドな同時計測データによって浮かび上がってきた分子レベルの現象としての疾病モデルや、それらのモデルとこれまでの生理学的なマクロモデルを組み合わせた臨床における治療を意識したモデルの研究、それらのモデルを用いた臨床研究や予防医学的な研究を対象とする。
上記のいずれにカテゴリーにも入らないが、CBI学会にとって重要と思われる先端技術や技術革新、例えば情報技術であれば、Semantic Webやネット上の知識収集システムのような次世代のインターネット技術、Ontology、学術論文からの知識の自動抽出など、また実験技術で言えば、次世代のゲノムワイドな計測技術、マイクロフルーディックス、原子分子の制御技術、新しい概念に基づく分子のデザインなどが対象になる。さらに新しい研究構想、研究戦略、科学技術政策、産学官の連携、ベンチャー起業、教育や人材育成などの論説も含まれる。

