薬物動態の予測に係る技術開発は、ここ最近で飛躍的な進歩を遂げ、生理学的薬物速度論(PBPK)モデルの活用についても、創薬での応用事例が多数報告されるようになった。しかしながら、大半の研究は基盤となるin vitroからin vivoへの外挿についても、分子論的な観点に立脚した妥当性の評価も不完全なものが多いのが現状である。また、PBPKモデルの構造についても、薬物の動態特性に合致したモデル構造の検討もあまりなされていないことが多い印象を持つ。しかしながら、薬物と分子の相互作用を熟慮した実態を伴うモデル構築をcase by caseで考えていかない限り、数理モデル解析は単なる”血中濃度あわせ”に終始することになってしまう危険性をはらんでいる。
そこで本講演会では、薬物の動態特性を考慮した上で、分子論や生化学的な観点から見て論理的でかつ無理のないモデル構築を行うことで、これまで難しいとされていた複雑な薬物間相互作用や病態時の薬物動態の定量的予測にチャレンジしている研究を紹介することとした。代謝酵素、トランスポーターの誘導、肝障害、腎障害時の予測、肝障害のマーカーアであるビリルビン値の変動が薬物のトランスポーターへの相互作用で説明できる事例、分子標的が薬物動態に関わるTMDDの例の非線形動態の解析、の報告をする。併せて、最もin vitro実験からの予測が困難とされている消化管吸収の定量的予測に資する新たな実験系開発の進捗についても紹介する。
| 日時： | 2024年6月18日（火）10：00－17：15 |
| 場所： | オンライン配信（Zoomウェビナー使用） |
| 世話人： | 杉山 雄一（城西国際大学イノベーションベース）、前田 和哉（北里大学薬学部） |
| 連絡先： | お問い合わせは、下記メールまたはTELにお願いいたします。 TEL: 03-6434-0458 （情報計算化学生物学会（CBI学会）事務局） |
プログラム
- 10:00 - 10:15 はじめに
前田 和哉（北里大学薬学部）
- 10:15 - 11:15 （Opening Keynote lecture）
「種々の薬物代謝酵素およびトランスポーターを介したDDI予測 ～リファンピシンのPBPK解析の事例～」
杉山 雄一（城西国際大学、イノベーションベース）、浅海 竜太（アステラス製薬株式会社）
- 11:15 - 12:00
「ヒト/動物消化管幹細胞由来分化細胞を用いた消化管吸収の予測の現状と課題」
前田 和哉（北里大学薬学部）
- 13:15 - 14:00
「In vitroの薬理学的パラメータ（Kd、Kiなど）から有効投与量, 有効血中濃度はどの程度、推定できるのか？」
土谷 聡耀（上海科技大学）
- 14:00 - 14:45
「腎障害時における薬物動態変動の予測―インタクトネフロン仮説の導入の必要性―」
浅野 聡志（中外製薬株式会社）
- 14:45 - 15:30
「肝障害時における薬物動態変動の予測―インタクトへパトサイト仮説の導入の必要性―」
浅海 竜太（アステラス製薬株式会社）
- 15:45 - 16:30
「トランスポーターを介した薬物との相互作用およびOATP1Bの内因性バイオマーカー（CP-1, ビリルビン）の変動を予測するための抗HCV薬、シメプレビルの生理学的薬物動態モデル」
中山 慎司（田辺三菱製薬株式会社）
- 16:50 - 17:15
総合討論（ラウンドテーブル議論）
＜12:00 - 13:15 休憩＞
＜15:30 - 15:45 休憩＞